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アスペルガー症候群①(自閉症とアスペルガー症候群の違い・特徴)

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学生時代に研究していたアスペルガー症候群について自分がまとめた文章を載せます。

 

アスペルガー症候群とは

ⅰアスペルガー症候群と自閉症

アスペルガー症候群は、1944年にハンス・アスペルガー(Asperger,L.)が報告した「自閉性精神病質」をもつ小児4事例の報告をもとに、1981年イギリスの自閉症研究者ローナ・ウイング(Wing,L.)が命名した。

アスペルガー症候群を正しく理解するためにはまず自閉症を理解しなければならない。まず自閉症の解説からはじめる。

 

・自閉症

現在自閉症と呼ばれている障害を医学・心理学的な視点から検討し、世界で最初に論文として報告したのはアメリカの精神科医レオ・カナー(Kanner,L.)だった。カナーは1943年に11例のユニークな行動パターンを示した子どもを報告し、翌年の論文で「早期乳幼児自閉症」と名づけた。現在自閉症と呼ばれる障害は、基本的にカナーの論文の内容を引き継いでいる。カナーは「早期乳幼児自閉症」の特徴として5つにまとめた。以下に順を追って説明する。

 

(1)初めから普通の子どものような方法で人や状況と関わりあうことができない

一人でいるのが苦にならず幸せそうで、赤ちゃんの頃はいわゆる「手のかからない」子だったりする。周りに人がいても関心を示さず、まるで人がいないかのように振舞ったりする。

 

(2)言葉がないか、あっても他人に意思を伝えるために言葉を使わない

例えば子守唄、祈りの文句、大統領の名前などは覚えるが、コミュニケーションの目的で言葉を使わないで聞いた言葉をオームがえしすることや、独り言を言うことが多い。

 

(3)物事をいつまでも同じにしておこうとする欲求が強く、そうでないと非常に不安になる

いわゆる「こだわり」である。物事の手順や家具の配置の変更などで不安になり必死に抵抗する。活動は単純な繰り返しになりがちで、自発的に行動することが少なく、興味の幅が狭く、物をくるくる回すような繰り返し行動に何時間も浸る。

 

(4)人に対する興味は少ないが、物に対しては強い関心を示し、物を器用に操作する

缶のふたとか、枯れ葉など一般的にはあまり価値が無いものに強く執着し集める。

 

(5)知的な障害があるとみなされやすいが、潜在的な認知能力は優れている

知的な賢そうな顔つきをしていることや、型はめなどを巧みにすばやくやったりすることなどから潜在的な知能は優れている、知能テストなどの点が低いのは協調性がないからだとカナーは考えた。

 

現在ではこの第5点は修正が必要で、知的な障害を合併することが少なくないことが明らかになっている。しかしその他の4点については基本的には変更の必要がないとされており、国際的な診断基準やアメリカ精神医学会の診断基準に引き継がれている。

 

以上が基本的な自閉症の特徴で、以下に述べるアスペルガー症候群と区別する。

 

・アスペルガー症候群

アスペルガー症候群の歴史はオーストリアの医師、ハンス・アスペルガーが1944年に「小児期の自閉的精神病質」と題した論文を発表したことで始まった。アスペルガーの報告した子ども達はカナーの報告した子どもたちと良く似ていたが、少し違うところもあった。

アスペルガーが重要とみなした特徴を以下に列挙すると、社会性に乏しい異様な行動、コレクションなどにみられる物への執着、表情と身振りによる表現が乏しいこと、物まねをしているような不自然な言語表現、計算などの特定の領域で優れた能力を発揮すること、などだった。

ウイングは当初カナーの記述に沿った「自閉症」を中心にサポートをしていたが、カナーの記述には合わないけれど、類似した行動を示す一群の子ども達がいて必要なサポートもカナータイプの子どもとほとんど同じだった。ウイングはロンドンのある地域で障害がある子どもを対象に調査した。典型的なカナータイプの自閉症の子ども以外にも「自閉症的な」行動特徴を持つ子どもが大勢みつかった。この「自閉症的な」行動特徴を持つ子どもが実はアスペルガーの記述した子ども達に似ていた。

 

アスペルガータイプの子ども達はカナータイプと比較すると知的な能力が高い、表面的には文法的に正確な言葉をしゃべる、一方的になりがちだが対人関心はある、などの相違点があった。しかし言葉を話すことができても微妙な皮肉とか冗談がわからないなどコミュニケーションの障害や相互的な対人関係がとれないなどの社会性の問題、興味の範囲が限られているなどの問題が明らかだった。そのためウイングはカナータイプの自閉症と連続した障害としてアスペルガー症候群を捉えた。

 

・自閉症スペクトラム

どちらのタイプの自閉症も社会性・コミュニケーション・想像力の障害がある。この3領域の障害が同時にみられる場合を自閉症スペクトラムと呼ぶことにした。自閉症スペクトラムにはアスペルガータイプとカナータイプの自閉症の両方と、どちらの基準も厳密には満たさないが前記の3領域の障害がみられる場合も含まれる。

 

自閉症の基本的特徴は、対人的相互関係および意思伝達の著しい異常またはその発達の障害、および著名に制限された活動と興味の範囲の存在である。そしてこれらの特徴の少なくとも一つの領域での発達の遅れあるいは機能の異常が、3歳以前に始まるとされている。

 

それに対して、アスペルガー症候群は、自閉症の特徴のなかで、言語発達に遅れがないこと、さらには、認知の発達、自己管理能力、適応行動、環境への好奇心、などについて臨床的に遅れがないこと、などが相違点としてあげられる。

 

自閉症は子供の頃にわかるので、幼い頃から自閉症を持つ人として育ち、特別学級に入り、自閉症としてできる仕事をして働く。個人差はあるが全くコミュニケーションをとれない人もいるし、他人の言葉がほとんど耳に入らない人が多い。日常生活もままならなくて、絶対に手助けが必要だし、何か天才といえるほど得意な分野があることが多いが、勉強ができる人は少ない。

 

これに対しアスペルガー症候群は自覚のないまま、また、周りからも少し変わっている人だと思われているだけのまま、気づかずに大人になってしまうのだ。

 

ⅱアスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群の特徴において、ウイングが示した3つの特徴(ウイングの三つ組みと呼ばれている)を以下に記す。先に述べた、社会性・コミュニケーション・想像力の障害である。このウイングの三つ組みは、診断あるいは気づきにあたって非常に大切な情報である。

 

(1)社会性の障害

場の雰囲気が読めない、あるいは人の表情が読めない。自閉症の人のように視線が合わないということはないが、一部視線を合わせにくい人も存在する。他人との接し方のルールがわからず相手の気持ちを察することができないので、相手が嫌がることを悪気なく平気で言ってしまうために、相手を傷つけてしまうことがよくある。社会的ルールや暗黙のルールというものが理解できないので、アスペルガー症候群の人は他人の中で浮いてしまうことや、嫌われたりいじめられたりする人が多い。

 

また、アスペルガー症候群の人の人付き合いの問題は積極的すぎるという形であらわれることもある。異性を好きになったとき、恋愛面で現れやすい。皆の前で「○○さん大好き」と大声で叫んでみたり、相手の拒否サインを察することができないため嫌がる相手に積極的にアタックし続けたりする。恋愛的に好きな相手以外にも、自分の関心のある話題を一方的に話しかけたりする。相手が困惑して迷惑がっていても気がつかず、自分にとって関心のあることは相手にとっても関心のあることだと思ってしまうことがこういった行動の一つの理由である。

 

(2)コミュニケーションの障害

 自閉症のようにまったく言葉が出てこないということはまずないが、話し方が特徴的なことがある。たとえば、会話にほとんど抑揚がなく、感情がこもっていないような話し方をする人や、非常に高いトーンで話す人、また、敬語しか使えない人などがいる。

 

 コミュニケーションが苦手なので、会話が長続きしないことが多い。先に述べたように自分の関心があることを、相手の興味におかまいなしに一方的に話す傾向があり、逆に相手の話は頭に入ってこなかったりする。話が飛びやすいのもアスペルガー症候群の人の話し方の特徴で、これも相手への配慮が苦手なために、自分の関心の赴くままに話題が変わっていくのだろう。

 

 また、曖昧な聞き方をされると意味がつかめない。久しぶりにあったので「最近どう?」と何気なく聞くと「どうって、何のことですか?元気かという意味ですか?勉強のことですか?友人関係のことですか、それとも家族との関係を聞いているのですか?」などと細かく聞き返されることがある。その場で何が話題になっているか、言外の意味を汲み取ることが苦手なので、どうとでもとれる曖昧な質問には答えることが難しいのだ。問いかけはなるべく具体的にする必要がある。

 

(3)想像力の障害

 こだわりが強かったり、一つのことに没頭したりして周りが見えなくなる特徴がある。変化が苦手なので融通が利かず、自分の思い通りに動いてくれないと不安を感じたりかんしゃくをおこしたりする。

 

 アスペルガー症候群の人は、たとえば大富豪のような複雑なルールのトランプゲームなど流動的なルールは覚えられないが、機械的記憶力が優れていることが多い。よって学校の勉強では優れた成績をとることがある。他人の名前、誕生日、星座や血液型など細かく覚えていることがある。沢山の情報を集め、暗記することは得意なのだが、人に付随する事実(情報)に関心があるだけで、その人自身に関心があるというわけではないようだ。

 興味の対象として「パターン」がある。自分の中でパターンを決めていてそのパターンを崩すことを嫌う。パターンを好み、規則に極端に従ったりする。

 

上記(1)~(3)に述べたウイングの三つ組み以外に、何気ない仕草やジェスチャー、表情、視線の向け方、相手との距離など言葉以外の非言語コミュニケーションも独特な特徴があることが多い。また、不器用さの目立つ人や、音や光、味などの感覚刺激について敏感なことがある。アスペルガー症候群の人の感覚的な問題は敏感さと鈍感さが共存することだ。

 

ⅲ中身は子どもの変な大人?

アスペルガー症候群の人は子どもの頃は単に素直な子、「子どもは正直ね。」といってすまされるような行動を大人になってもしている面があるので、子どもの頃は何とも思われなくても、大人になると違和感がある。

 

日常、大人はもちろん子どもでも相手の気持ちを読みながら暮らしている。相手が自分を騙そうとしているとか、本当は喜んでいないのに喜んだふりをしている、そういう相手の意図を読むことで日常の生活が成り立っている。

このように相手の気持ちを読む能力は通常では4~5歳くらいから芽生え始めるといわれている。アスペルガー症候群の人は大人になっても相手の言ったことをそのまま単刀直入に受け止めてしまいがちだ。冗談やあからさまな嘘、皮肉やほのめかしなどがわからず、人の話を鵜呑みにして信じてしまう。

 

流動的なルールなどが苦手で、加減も苦手だが、ただの暗記や、答えのある勉強は得意だ。ここで書いたルールが苦手というのは、守れないというわけではなく、むしろ守りすぎてしまう。柔軟性がなく、とにかく変化が苦手なのだ。よって、人間関係の暗黙の了解のようなものもわからないので、空気が読めない、周りが見えない。立場やシーンによって言葉づかいや態度を変えることが苦手。思ったことが口をついてでてしまう。普通なら、「空気を読んでわかる」それがわからない。また、感情的で、何かにこだわって熱中し、反対に、つまらなければ見向きもしない。

 

このようなアスペルガー症候群の性格的な特徴は、子どもであれば何の不自然さもなく、「子どもは正直」で許してもらえるものなのかもしれない。

 

ⅳ気づかないまま大人になる

 アスペルガー症候群の面白いところは、大人になっても気づかないところだ。勉強を得意とする場合が多いので良い学校へ行って、就職して、結婚して、子どもが生まれる。

本人も周りも、とくにその人がアスペルガー症候群だと意識せず、少しこだわりの強くコミュニケーションが苦手な人という印象を抱かれるだけのまま大人になっていくのだ。

 

ある新聞記事のコラムに載っていた話では、アスペルガー症候群の夫を持つ妻の投稿で、こういうものがあった。

結婚をして子どもが生まれても、アスペルガー症候群だということはそれまでわからなくて、周りや妻は、その夫はすこし他人と違うところがあるという理解だった。しかし、子どもとの関わりを見ていくうちに、子どもへの愛情が一切見えなかったので、いよいよ疑い始めた。ある日、妻が外出していたときに、子どもが体調を崩して嘔吐してしまった。しかし、夫は同じ部屋にいてそれをただ黙って見ていた。さすがにおかしいと思って、今までの行動を考えてもアスペルガー症候群だと確信して、夫婦生活も長かったが離婚という結果となった。

 

 この投稿のように、離婚をしてしまうケースも多いが、本人も含めきちんと理解して対応していくケースもまた多い。パートナーや子どもは、アスペルガー症候群の人をパートナーや親に持つなかで計り知れない苦悩を体験する。その苦悩の数々を次の章で述べる。

 

 私はここで、本人が理解していないという点に着目したい。本人は自分がアスペルガー症候群だなどと、まったく気づいてないのだ。そうすると、相手を責めることが多くなる。

成人のアスペルガーの特徴として、先の見通しを持てないので柔軟性がなく、急な変更に対応できず、それが怒りとして表現され相手を攻撃してしまう。

また、学力的に優れた人が多く、プライドが高いために、特に自分に対する言葉に敏感に反応する。自分のプライドに気に障ることがあると、執拗に相手を責める。

物事の全体像が把握できず、自分のこだわり、モノサシで測り、一部の些細なことで人を責める。

以上のように、とくにパートナーである妻や夫、そして子どもへ強く怒りを表現することが多い。

 

 本人が相手を理解できずに怒り、家族もその人がアスペルガー症候群だとわかっていないとその人を理解できず、お互いにわけがわからない状態なのだ。生活をしていく中で、家族はその人がアスペルガー症候群だと段々気づき、もしかしたら離婚し、もしかしたら対応していくかもしれない。しかし、本人は放っておいたらいつまでたっても気づかない。だから、診断をして本人が理解することが最も重要なことなのだ。

 

参考文献

参考『自閉症・アルペルガー症候群 「自分のこと」のおしえ方』

自閉症・アスペルガー症候群「自分のこと」のおしえ方 [ 吉田友子 ]

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感想(4件)

参考『よくわかる発達障害』

よくわかる発達障害第2版 [ 小野次朗 ]

価格:2,376円
(2016/11/21 15:46時点)
感想(1件)

東京都自閉症協会(http://www.autism.jp/